北海道英語教育学会第24回研究大会

ご案内

2023年7月12日(水)

北海道英語教育学会 会長 笠原 究

初夏の候、会員の皆様にはご清栄のこととお喜び申し上げます。

この度、本学会では下記の通り第24回研究大会を実施することとなりました。本年は、SLA研究において国際的に幅広く活躍され、昨年度はスタンフォード大学が認定する「世界で最も影響力のある研究者トップ2%(言語・言語学分野)にも選出された鈴木祐一先生(神奈川大学国際日本学部准教授)をお迎えし、「SLA研究の知見を活かした英語授業カリキュラム:『練習』・『繰り返し』をどう見直すか?」と題してご講演いただく予定です。また、本大会の研究発表者を下記の要領で募集いたします。多くの方の発表申込、大会参加をお待ちしております。

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開催要項

主催:北海道英語教育学会

日時:2023年10月8日(日) 12:30〜17:00

会場:北海道教育大学旭川校P棟

(旭川市北門町9丁目)

発表時間:1件30分(発表20分、質疑5分、移動5分)

参加費:会員 無料

非会員(資料代として) 一般 1,000円、大学院生 500円

学部生 無料

懇親会:研究大会終了後、開催いたします。

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大会要項ダウンロード

大会要項は下記のボタンからダウンロードできます。

発表申し込み(8月28日17:00締切)

 発表をご希望される方は、発表者名・所属・発表タイトル日本語300字程度、または、英語150語程度の要旨を添え、下記の発表申し込みフォームからお申し込みください。

参加申込

 参加をご希望される方は下記の参加申込フォームからお申し込みください。

講師の写真

特別講演

演  題:「SLA研究の知見を活かした英語授業カリキュラム:『練習』・『繰り返し』をどう見直すか?

講  師:鈴木 祐一 氏(神奈川大学国際日本学部准教授)

講演概要:英語授業カリキュラムは、文法表現などを含む形式に重きをおいた指導法と、コミュニケーション・意味伝達に重きをおいた指導法の2種類に大別できます。形式を重視した指導法は、日本の中高の検定教科書が文法シラバスで作られているため親和性が高く、近年では青森県立田名部高校の「TANABUモデル」という授業カリキュラムが全国的に注目を集めています。一方で、意味伝達を重視した指導法に近い日本のカリキュラムとして、横浜南高等学校附属中学校で開発された「5ラウンドシステム」での取り組みがあります。そして、TANABUモデルと5ラウンドシステムは、それぞれ全く異なるアプローチで、生徒たちの英語力を大きく伸ばすことに成功しています。両カリキュラムに共通する点として、効果的な「練習」が巧みに「繰り返し」組み込まれていることが挙げられます。そこで、本講演では、英語指導に役立つ効果的な繰り返し練習について議論をしたいと思います。具体的には、第二言語習得(SLA)の観点から、「練習」や「繰り返し」というコンセプトがどのように捉え直されているかを説明します。同時に、「練習」や「繰り返し」とも関連する「暗記・模倣」や「コミュニケーション・タスク」などについても掘り下げます。そして、SLAの外国語習得理論とカリキュラム実践例(TANABUモデルと5ラウンドシステムなど)を同時に扱う本講演内容を基に、理論と実践の往還することに重要性について議論できればと考えています。

講師略歴:神奈川大学国際日本学部 国際文化交流学科准教授。専門は第二言語習得。The Modern Language Journal, Studies in Second Language Acquisition, Language Teaching Research などに論文多数。昨年度はスタンフォード大学が認定する「世界で最も影響力のある研究者トップ2%(言語・言語学分野)にも選出される。言語習得における「練習・繰り返し」をスキル習得理論の観点から捉え直し、研究と実践の往還に尽力している。主な著書に『英語学習の科学』(研究社)、『高校英語授業における文法指導を考える』(アルク)、Practice and Automatization in Second Language Research (Routledge) などがある。趣味はNBA観戦だが、先日のバスケットボール日本代表のワールド・カップでの大躍進に、男子プロバスケットリーグのBリーグへも興味を持ち始めている。

日程

12:00-12:30 受付
12:30-12:50 開会式・総会
13:00-14:00 SIG企画、研究発表・実践報告①〜⑥
13:00-14:00 「生成系AIを活用した英語教育の先行研究と実践例の紹介」
北海道英語教育学会E-learning SIG
小野 祥康(北海道科学大学)、青木千加子(北海学園大学)、三ツ木真実(小樽商科大学)、沢谷佑輔(北星学園大学)、太田とも美(北海道大学)、山上徹(札幌新陽高等学校)
 この数か月で目まぐるしく進化・発展をしてきた生成系AIは、我々の生活にいろいろな意味で大きなインパクトを与え続けており、教育研究の現場においてもパラダイムシフトが迫られている。北海道英語教育学会e-learning SIGでは、生成系AIが英語教育に及ぼす影響や具体的な活用例等について情報収集を進めてきた。本発表では、まず、生成系AIを英語教育に取り入れた成果等に関する先行研究を紹介し、研究や執筆活動への活用事例について話題提供をする。次に、特にChatGPTを学校現場の授業で具体的に活用する方法や知見、SNSを利用したChatGPTの英会話練習のアプリケーションを紹介し、学生がアプリを使用した感想等も踏まえながらその効果や課題について考察する。
13:00-13:25 研究発表①
「Examining the Relationship Between WTC and Utterance Quality in Japanese EFL Learners from the aspects of complexity, accuracy, and fluency (CAF)」
佐藤臨太郎(奈良教育大学)
 English language teaching has evolved from emphasizing structural mastery to prioritizing communicative competence via genuine language use. Such a shift aligns with second language theories highlighting the significance of input, output, and interaction in language learning. Central to this is the concept of learners' "willingness to communicate" (WTC). Defined by MacIntyre et al. (1998) as a readiness to engage in discourse when one can choose to do so, WTC is pivotal for effective learning. It can be a consistent trait or a fluctuating state influenced by varying conditions and emotions. This research investigated the relationship between the fluctuating state of WTC and the quality of L2 (second language) utterances, measured by complexity, accuracy, and fluency (CAF) - indicators of L2 proficiency. The study also explored how speakers’ proficiency levels affect this WTC-CAF relationship.
13:00-13:25 研究発表②
「状況設定付き聞く話す同時指導法」
加藤 心(士幌町中央中学校)
 日本人は英語の「知識」はあるが英語の「技能」は低いと言われ、CEFRの指標でも6段階の内、ほとんどが最低のA1,A2である。一般的に「知識」が練習を通して「技能」に転換すると思われ、また「インプット」が先で次第に「アウトプット」に移行すると思われがちだが、逆に先に「技能」を練習させてから後で「知識」を教えるという授業実践及び検証の英会話テストを発表する。2018年の勤務校で中学2年生19名を対象に「聞く(インプット)」と「アウトプット(話す)」を同時に指導し、英会話テストは19名の平均が100wpm以上の速さで、日本語訳を介さずにやり取りをした。証拠動画、証拠データ、模擬授業の実演で発表する。
13:00-13:25 研究発表③
「動詞と名詞を組み合わせて覚えることの効果」
濱田 裕介 (北海道教育大学 大学院生)
 本研究は意図的語彙学習におけるワードリストを用いたpaired-associate learningの効果に関する研究で、動詞の形式と意味を結びつけることを目的とした学習において、学習者が動詞を単体で覚える方法と動詞を既知の名詞と組み合わせて覚える方法の効果や違いを考察することを狙いとした。Kasahara(2010)やKasahara(2011)の研究の準レプリケーションとして、ほぼ同じ研究デザインを用い、異なるサンプルを対象に調査をおこなった。結果は上記2つの調査と同様に、動詞を既知の名詞と一緒に覚える方が動詞を単独で覚えるよりも、意味の想起と保持に効果的であることがわかった。また、本研究においては、動詞が既知の名詞と一緒に提示されなかった場合についても焦点を当て考察をしていきたい。
13:30-13:55 研究発表④
「How do JHS students’ WTC Change by Stages of Revised-PPP?」
泉谷 忠至 (近畿大学附属高等学校・中学校)
 Willingness to communicate (WTC), an individual motivation to communicate, is crucial for improving communication skills in English. To improve WTC, in the Japanese EFL context, gradual approaches that prepare learners for communicative activities are necessary such as Presentation-Practice-Production (PPP). However, previous research has yielded mixed results (Izumitani, 2020, 2022). Further investigation is required to determine how PPP can enhance WTC. This study examined third-year junior high school students’ changes in WTC at each stage of a revised version of PPP (Sato et al., 2022). A modified version of Yashima's (2009) WTC questionnaire was administered three times, and the data was analyzed with a repeated-measures one-way Analysis of Variance. To closely examine changes in WTC, two students' scores of WTC were recorded after every lesson. After all the lessons, a semi-structured interview was conducted with them about using English in the classroom. The interview was analyzed qualitatively. The results and discussion will be shown in detail in the presentation.
13:30-13:55 研究発表⑤
「「自己調整を図る児童の育成」〜「外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方」を働かせる外国語科の実践を通して〜」
齋藤梓伸 (北海道教育大学附属旭川小学校)
 新学習指導要領では,「主体的に学習に取り組む態度」を評価する一側面として「自らの学習を調整しようとする側面」が示された。本発表の目的は,児童が外国語科において自らの学習状況を把握し,学習の進め方について試行錯誤する学習を通して,「外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方」を働かせながら,コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力を育む授業の在り方を検討することである。公教育における外国語学習の初期段階である小学校において,児童が「自己調整」を図りながら,外国語の表現力等を身に付けるための教師の指導・支援等について意見を交流したい。
13:30-13:55 研究発表⑥
「高校1ヶ月留学が心理面と語用論的能力の成長に与える影響」
吉田 努(北星学園女子中学高等学校)
 全国的にコロナ禍によって中断された高校留学が、再開されてきている。吉田(2023)は、留学期間(1ヶ月・3ヶ月・1年)によって、留学が高校生に与える心理的な影響と「依頼」・「謝罪」といった語用論的能力の成長に違いがありそうだということを示した。しかしながら、吉田(2023)のデータは同一生徒の留学前後のものではなく、また、分析が不十分であった。本研究では、1ヶ月留学を選択した者の内、参加同意をした生徒(N=6)の留学前後(2023年7月・9月)と留学を選択せず参加同意をした生徒(N=6)を比較した。留学の心理的な影響は横田他(2018)の質問項目を利用し、語用論的能力は記述式談話完成タスクを用いて収集し、Leech(2014)・清水(2016)を参考にポライトネスの観点から分析した。
13:55-14:10 移動・休憩・展示見学
14:10-14:35 研究発表⑦
「画像生成AIを用いたイラスト付き小学生向け英語辞書の提」
佐藤 亮輔 (北海道教育大学教育学部)、福谷 遼太(高知大学教育学部) 本間 里美(北海道教育大学教育学部)
 GIGAスクール構想により、小学校では児童に1人1台ずつのコンピュータ端末が与えられている。小学校第5・6学年の外国語(英語)科の学習場面では検索エンジンや翻訳サイト等が使用されることがあるが、これらは小学校における英語教育に特化したものではなく、数ある単語や意味の中から児童が適切なものを選択することは難しいように思われる。そこで本発表では、生成AIによるイラスト付きの英語辞書とその使用法を提案し、今後の小学校英語教育におけるコンピュータ端末の活用法を模索していきたい。イラスト付き辞書はこれまでの紙辞書とは異なり直感的に使用でき、記憶にも残りやすいと考えられる。また、教師も教材作成の際にイラストを使用することができることから、従来の辞書とは違った教育効果が期待できるものである。
14:10-14:35 研究発表⑧
「Fluctuations of Learners’ WTC During Online Conversations」
古賀功 (龍谷大学) 今野勝幸(龍谷大学)
 This study investigated online conversations of Japanese university learners to examine how their WTC fluctuated from situation to situation. They talked about “things they like” for five minutes, and the conversations were recorded. After the conversation, each participant was interviewed by the researchers about their WTC. In this stimulated recall, participants watched the recorded conversation, rated the degree of their WTC from -5 to +5 every 20 seconds, and were asked about their feelings and thoughts at that moment. Fluctuations of WTC were analyzed to discover what factors were responsible for the changes. The results indicated that a sense of achievement and responsibility had a positive effect on WTC. Background knowledge about topics was double edged sword; if learners had sufficient knowledge, their WTC increased whereas if not, their WTC decreased. Finally, this study suggested some strategies for learners to successfully communicate with others.
14:10-14:35 研究発表⑨
「工学系地方大学の学生が持つ英語学習ビリーフと将来ビジョン」
久保 比呂美(北見工業大学)
 工学系地方大学の学生は、英語に対してネガティブな思考やアウトプットの苦手意識を抱く傾向が見受けられる。工学系地方大学の英語学習に関する特徴を見出すことで、ニーズに沿った英語教育と課外英語学習支援の可能性を考える。1年生を対象に、英語学習場面における感情と将来ビジョンに関してアンケート調査をした結果、英語学習に関してポジティブな感情を持つ学生数の10倍以上がネガティブな感情を持っていた。また日本語以外の外国語を使わない将来ビジョンを描いている学生が半数以上だった。英語学習に関して不安・緊張といったネガティブな感情を持っている学生の実態から、今後の英語教育と英語学習支援について考察する。
14:10-14:35 研究発表⑩
「Can-Doリストの活用を軸とした中学校教員向けオンライン研修プロクラムの開発」
根岸清人(苫小牧市立明野中学校) 阿部巧(北海道立教育研究所)
 Can-Doリストは授業実践においてその活用が期待されている。文部科学省(2023)の「英語教育実施状況調査」によると、「Can-Do リスト」形式による学習到達目標を設定している中学校の割合は94.1%と大変高い数値を示している。これに対し、「Can-Do リスト」形式による学習到達目標を公表している中学校の割合は65.7%と、その活用の実態については課題があるといえる。そこで本研究ではCan-Doリストの活用を軸とした中学校教員向けのオンライン研修プログラムを開発し、参加者を募り研修を実施した。その結果、参加者に学習到達目標の設定、言語活動の充実、指導と評価の一体化においてプラスの影響を及ぼしたことが示唆された。
14:40-15:05 研究発表⑪
「ChatGPTを使った英作文の修正における大学生の自己調整:改善用プロンプトとリフレクションの分析から」
鈴木健太郎 (北海道教育大学)
 本発表の目的は、大学生がChatGPTを使って、自身の英作文を改善するためにどのようなプロンプトを用い、そこからどのような学びを得るかを探索することにあった。日本人大学生が授業内で特定のトピックについて英作文をし、授業外で書いた内容を共通のルーブリックを用いて内容、一貫性、語彙、正確さの観点でChatGPTに採点してもらった。その後、自分で考えた改善用のプロンプトでリライトしてもらい、オリジナルと比べての学びを記入した。1学期の中で上記の活動を異なるトピックで7回実施した。結果として、リフレクションの内容は語彙やフレーズなどの局所的な内容が多かったが、アンケートからは内容や構成面での学びを得ていたことが示唆された。
14:40-15:05 研究発表⑫
「小学5年生と6年生の授業における教師の訂正フィードバック及びその効果の比」
内野 駿介(北海道教育大学) 、平山伸正(札幌市立宮の森小学校)
 小学5年生と6年生の各1単元ずつにおける教師の訂正フィードバックの特徴を比較した。分析はLyster & Ranta (1997)に準ずる枠組みを用い、児童の発話の誤りの種類 (error)、誤りに対する教師のフィードバックの種類 (feedback),フィードバックに対する誤り訂正の有無 (uptake)、誤り訂正に対する強化の有無 (reinforcement)の4観点でコーディングした。主な分析結果は以下のとおりである。(a)5年生の授業では単元を通してreinforcementとpromptの割合は一定だが、6年生の授業では単元が進むにしたがってreinforcementの割合が減り、promptの割合が増加すること、(b)どちらの学年の授業においても最もよく使われているフィードバックはリキャストだが,同時にリキャストは最も発話訂正につながりづらいこと。
14:40-15:05 研究発表⑬
「第二言語習得研究における心理的フローに関するレビュー:理論的側面及び方法論的側面か」
中村姫奈子 (明治大学大学院)、樫村祐志(明治大学大学院)
 本研究は、第二言語習得(SLA)研究における心理的フローに関する理論的側面及び方法論的側面を概観することを目的とするスコーピングレビューである。本研究で設定した適格性基準を満たしている1992-2023年に出版された22本を分析対象とした。理論的側面では、各研究でフローの特徴にあたるものは異なっていたが、興味(interest)、コントロール(control)、注意(attention)、挑戦とスキルのバランス(challenge-skill balance)が多く含まれていた。方法論的側面では、量的手法が最も多く用いられており、特に、Egbert (2003)のアンケート使用した調査が最も多かった。最後に、今後の課題点として、エンゲージメント等の類似概念との区別化、SLA研究におけるフローに関する構成概念の統一、それに伴う尺度等の新たな開発、アウトカムの測定についても触れる。
15:05-15:20 移動・休憩・展示見学
15:20-16:50 特別公演
「SLA研究の知見を活かした英語授業カリキュラム: 「練習」・「繰り返し」をどう見直すか?」
講師 鈴木 祐一 氏(神奈川大学国際日本学部准教授)
16:50-17:00 講演質疑応答
17:00-17:10 閉会
18:30-20:30 懇親会